やる気が出ないときに、動き出すための方法
やる気が出ないときは、自分を強く追いこむのではなく、始めるハードルを下げましょう。5分だけ、はっきりした一歩をひとつ、そして前もって決めた「いつ、どこで」。私たちが怠けと呼ぶものは、たいてい脳がそのタスクを「割に合わない」と判断した結果です。労力が大きく、ごほうびは遠く、始め方があいまい。やる気は行動の前ではなく、行動しているうちに出てくることがよくあります。このページでは、研究でわかっていること、怠けと疲れや落ちこみの見分け方、始めるための儀式、仕事とリモートワークでのやり方、何もしたくない日のための計画を紹介します。
- 怠けと感じるものは、多くの場合「今この労力は割に合わない」という脳の判断です。しんどさの感覚は、時間をほかのことに使えるという合図です(Kurzbanら, 2013)。
- やる気は最初の一歩のあとに出てくることがよくあります。「気分より先に行動」という考え方は、行動活性化の土台です(Ekersら, 2014)。
- 「Xになったら、Yをする」という計画は、数十の研究で、実際にやる可能性をはっきり高めました(Gollwitzer & Sheeran, 2006)。
- 仕事でいちばんやる気が出るのは、意味のあることで前に進んでいる実感です。小さな進歩でもかまいません(Amabile & Kramer, 2011)。
- 何週間も気が乗らない、何も楽しくない、悲しさや絶望感があるなら、それは怠けではありません。専門家に相談しましょう。
怠けの正体とは
私たちは、掃除や勉強、仕事に取りかかれないことや、ソファから立ち上がれないことまで、まとめて怠けと呼びがちです。心理学ではあまり使われない言葉です。同じ行動の裏に、違う原因があるからです。よくある原因のひとつは、脳が労力とごほうびを比べて、「今は割に合わない」と判断することです。
ロバート・カーツバンら(2013)は、役に立つ見方を示しました。しんどさの感覚は、燃料が空になったというサインではなく、時間と注意をほかの、もっと楽しいことに使えるという合図だというのです。だから長くて退屈なタスクは重く感じ、スマホは簡単に私たちを引き寄せます。
怠けと先延ばしも同じではありません。先延ばしは、やりたいことを後回しにして、そのことで気分が悪くなることです。シロワとピキル(2013)によると、主に気分をすぐ立て直すための行動です。こちらに近いと感じるなら、先延ばしをやめる方法を読んでください。「怠け」は、どちらかといえば何もしたくないときのことです。
やる気が出ない原因
「何もしたくない」は誰にでもあります。たいていの場合、原因は性格ではなく何か具体的なことで、原因ごとに効く方法が違います。
| 感じていること | よくある正体 | 役立つこと |
|---|---|---|
| 特定のひとつのことだけやりたくない | タスクがいやなもの、あいまい、または大きすぎる | 最初の一歩を小さくする、5分、はっきりした目標 |
| 何もしたくない、疲れている | 睡眠不足、負担のかけすぎ、体調不良 | 休む、眠る、シンプルな1日にする |
| やることが多すぎて、何から始めればいいかわからない | 負担のかけすぎ、選べない状態 | ひとつだけ選び、ほかは今日はお休み |
| 何のためにやるのかわからない | 意味や目に見える進み具合がない | 誰の役に立つかを書き、終えた一歩を記録する |
| やりたいのに始められない | 失敗への不安、完璧主義 | わざと「下手な」下書きを作る、if-thenプランニング |
| 何も楽しくない、以前好きだったことも | うつ病など、健康の問題の可能性 | 医師や心理の専門家に相談する |
自分を説得する前に、今日はどの行に当てはまるかを考えましょう。疲れには厳しい計画は効かず、あいまいなタスクには休んでも効きません。
やる気より先に行動
ふつうは、やる気 → 行動 の順番だと考えます。でも多くのことでは逆に働きます。行動 → 進んでいる実感 → やる気。掃除したくなるのを待つ人は、長く待つことになりがちです。5分掃除した人は、続けるほうが始めるよりずっと楽だと気づくことがよくあります。
この考え方を土台にしているのが行動活性化です。気分が乗らなくても、無理なくできる小さな、意味のある活動を計画し、気分の改善を目指す心理的な方法です。研究のレビューでは、うつ病にも効果があることが示されています(Cuijpers, van Straten & Warmerdam, 2007;Ekersら, 2014)。ここでは治療として紹介しているのではなく、シンプルな考え方だけを借りています。始めるために、準備ができたと感じる必要はない。
もうひとつのよい知らせは、意志の力を「節約」しなくていいことです。意志の力は1日のうちに減っていく電池のようなもの(自我消耗)という考え方は、23の研究室による事前登録された追試でほとんど再現されませんでした(Haggerら, 2016)。自制心よりも役立つのは、意志の力がほとんどいらないように、環境と始め方を整えることです。長く続ける仕組みの作り方は自制心を鍛える方法で。
やる気の出し方:意志の力ではなく仕組みで
やる気は天気のようなものです。晴れる日もあれば、雨の日もあります。仕組みは暖房のようなもので、天気に関係なく働きます。仕組みは4つでできています。はっきり決めた始まり(いつ、どこで、何を)、小さな最初の一歩、整えた環境、すぐに返ってくる手ごたえ。最初の1分を乗り切るための5つの儀式です。
- 最小限の行動から。「走る」ではなく「靴をはいて家の前に出る」。目標は始めることで、すぐに終えることではありません。
- いつ、どこでを前もって。「水曜7時、リビング、動画を見ながら15分の運動」。ピーター・ゴルヴィツァーとパスカル・シーラン(2006)は、こうした計画を試した94の研究をまとめ、計画を立てた人は、漠然とした目標だけの人よりはっきり多く実行していました。
- 前の晩に環境を整える。服は椅子の上に、ノートは机の上に開いて、スマホは別の部屋に。朝に探さなくていいものが増えるほど、言い訳がひとつ減ります。
- 始まりの合図。始めるたびに、同じお茶、同じイヤホン、同じ曲。
- 焦らずくり返す。フィリッパ・ラリーら(2010)の研究では、新しい毎日の習慣が自動的になるまでに、中央値で約66日かかりました。習慣を身につける方法も参照。
場面ごとのすぐ使えるプラン
| 場面 | やりたくない理由 | 最初の一歩(5分以内) | 詳しいガイド |
|---|---|---|---|
| 勉強 | 範囲が多く、結果は先 | ノートを開き、今日答えを見つける問いを3つ書く | 勉強のやる気 |
| 運動 | しんどさ、着替え、移動 | 着替えて、運動をひとつだけする | 運動のやる気 |
| 掃除 | 散らかりに終わりがないように見える | 10分のタイマーと、ひとつの場所 | 掃除のやる気 |
| 仕事 | あいまいなタスク、中断、進み具合が見えない | 今日進める3つを書き、ひとつを15分でやる | 下のセクション |
| 文章を書く | うまく書けないことへの不安 | 下手でもいいので3文書く | 完璧主義と先延ばし |
仕事のやる気:最初の小さな達成と集中のブロック
仕事のやる気が出ないのには、たいてい具体的な理由があります。「戦略を準備する」というタスクは始めようがない、1日じゅうメール対応に追われて夜には何をしたのかわからない、数分ごとに誰かに話しかけられる。まずは朝の15分で、次のことを試しましょう。
- メールを開く前に、今日進める3つを書く。そのうちひとつがいちばん大事なものです。
- すぐの小さな達成をひとつ。5〜15分ですぐに終わるタスク。大事なメッセージへの返信、書類の送付など。
- いちばん大事なことに、最初のブロックを入れる。具体的に「9:30〜10:20 プレゼンの構成」。小さな達成は弾みをつけるためのもので、大事なタスクの代わりにはなりません。いちばん難しいタスクは、カエルを食べろのすすめどおり、最初の大きなブロックに入れます。
グロリア・マークらの研究(2008)では、よく中断された人はタスクを早く終えたものの、ストレス、いらだち、時間のプレッシャーが大きくなっていました。だから、ひとつのことに25〜50分のブロックで取り組み、ブロック中は通知を切り、メッセージは1日2〜4回まとめて処理しましょう。仕事以外でも注意を守る方法は集中力を高める方法で。
リモートワークでは、意志の力の代わりに境界線を引きましょう。始業と終業の時間を決める、始めの短い儀式(コーヒー、計画)と終わりの儀式(明日やることを書いてノートパソコンを閉じる)、そして朝に「オン」にし、夜は机を片づけて「オフ」にする仕事場所。同僚と静かにビデオ通話をつないで、それぞれ作業するのが役立つ人も多くいます。1日の終わりをはっきりさせるのは怠けではなく、明日のやる気の燃料です。
小さな達成と、報われる努力
テレサ・アマビールとスティーブン・クレイマー(2011)は、働く人の日誌の記録を1万2,000件近く分析しました。いちばんよい日は、意味のあることで前に進めた日で、小さな進歩でも十分でした。マイケル・インズリットら(2018)は努力のパラドックスを説明しています。努力はつらいものですが、同時に、私たちは努力を注いだものをより大切に思います。つまり脳が努力をいやがるのは、主にその努力が何のためかが見えないときです。
実際には、達成がこまめにやってくるように仕事を分け(「卒論を書く」ではなく「2章の導入の段落」)、進み具合を記録しましょう。自己決定理論(Ryan & Deci, 2000)は、やる気がしぼまないための3つの条件を挙げています。
| 欲求 | 今日できる支え方 |
|---|---|
| 自分で選べること | タスクの順番ややり方を自分で選ぶ |
| できるという感覚 | 必ずうまくいくくらい小さな一歩 |
| 人とのつながり | 今日やることを友だちに伝える、または並んで作業する |
週に1回ふり返りましょう。週の振り返りで、実際にどれだけ進められたかがわかります。
役立つごほうび(と逆効果のごほうび)
気晴らしはすぐにごほうびをくれますが、仕事のごほうびは何週間も先です。ごほうびでこの差を埋められるのは、努力のすぐあとに来て、前もって決めてあり、釣り合いがとれていて、目標に逆らわないときです。運動のごほうびにケーキ、1時間勉強したら1時間スクロール、は目標を台なしにします。
キャサリン・ミルクマンら(2014)は、テンプテーション・バンドリング(誘惑の抱き合わせ)を試しました。好きなことを、いやなことをしているときだけ自分に許す方法です。夢中になれるオーディオブックをジムでだけ聴けた人は、はじめのうちジムに通う回数が増えましたが、効果はだんだん弱まりました。家でも同じように使えます。お気に入りのポッドキャストは掃除のときだけ、好きなコーヒーは書きものをするときだけ。
何もしたくない日のための計画
- 体を整える。水を1杯、何か食べる、10分外に出る。疲れた脳は、どんな労力も高く見積もります。
- ひとつだけ選ぶ。本当にひとつだけ。ほかは今日はお休みです。
- それを5分に縮める。「メールを開いて、最初の1文を書く」。
- タイマーを始めて、取りかかる。そのあとで、続けるかどうかを決めます。
- できたことを書きとめ、自分にやさしく。「自分は怠け者だ」というレッテルは何も変えません。「今日はゆっくりだけど、5分やった」は変えてくれます。
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CORTEX(誰でも無料)は、これらの原則をひとつの仕組みにまとめています。
- いつ、どこでを前もって:クイック追加(Qキー)で「洗濯 今日 ~5m」や「運動 毎週水曜 7時 ~15m」と入力すれば、時刻、長さ、くり返しも一緒に保存されます。
- 待つ代わりに5分:タスクから集中タイマーを始めると、CORTEXが実際に作業した時間を記録します。
- 決めなくていい1日:「今日の計画を立てる」ボタンが、予定の合間の空き時間に、余裕をもたせてタスクを並べます。
- すぐのごほうび:終えたタスクごとに優先度に応じたXPとクレジットがもらえ、ショップで自分で決めたごほうびと「交換」できます。

よくある質問
怠け癖を直すには?
何をやりたくないのかをはっきりさせ、始めるハードルを下げましょう。やめてもいい5分、整えた環境、すぐあとの小さなごほうび。睡眠をとり、「怠け者」というレッテルは手放しましょう。怠けはたいてい、性格の欠点ではなく、始めるコストが高いだけです。
何もしたくないとき、どうやってやる気を出す?
気分を待たないこと。体を整え、小さなことをひとつ選び、やめてもいい5分を自分に許し、できたと書きとめましょう。やる気はたいてい、始める前ではなく始めたあとにやってきます。
仕事のやる気を出すには?
15分以内の小さな達成から始め、いちばん大事なタスクに時刻を決めた集中のブロックを入れ、通知を切りましょう。進み具合を記録し、リモートワークでも、仕事を終える時間を前もって決めておきます。
やる気が出ないのは、うつ病のサイン?
その可能性はありますが、それだけで何かが診断できるわけではありません。2週間以上何も楽しくない、悲しさや絶望感がある、睡眠や食欲が変わったなら、専門家に相談しましょう。つらいときは、いのちの電話(フリーダイヤル0120-783-556、毎日16〜21時。ナビダイヤル0570-783-556、毎日10〜22時)に電話できます。
どうしていつも怠けてしまい、疲れているの?
よくある原因は、睡眠不足、負担のかけすぎ、体調不良です。疲れた脳は、どんな労力も高く見積もります。はっきりした理由のない疲れが長く続くなら、医師に診てもらいましょう。
意志の力は電池のようなもの?
そうとは言えません。「自我消耗」の理論は、多くの研究室による大規模な追試で再現されませんでした(Haggerら, 2016)。意志の力を節約するより、ほとんど使わずに済むように環境と始め方を整えましょう。
出典・参考文献
- Kurzban, R., Duckworth, A., Kable, J. W. & Myers, J. (2013). An opportunity cost model of subjective effort and task performance. Behavioral and Brain Sciences
- Hagger, M. S. et al. (2016). A multilab preregistered replication of the ego-depletion effect. Perspectives on Psychological Science
- Inzlicht, M., Shenhav, A. & Olivola, C. Y. (2018). The effort paradox: Effort is both costly and valued. Trends in Cognitive Sciences
- Sirois, F. & Pychyl, T. (2013). Procrastination and the priority of short-term mood regulation. Social and Personality Psychology Compass
- Cuijpers, P., van Straten, A. & Warmerdam, L. (2007). Behavioral activation treatments of depression: A meta-analysis. Clinical Psychology Review
- Ekers, D. et al. (2014). Behavioural activation for depression; an update of meta-analysis. PLoS ONE
- Gollwitzer, P. M. & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology
- Lally, P. et al. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology
- Mark, G., Gudith, D. & Klocke, U. (2008). The cost of interrupted work: More speed and stress. CHI 2008
- Amabile, T. M. & Kramer, S. J. (2011). The power of small wins. Harvard Business Review
- Ryan, R. M. & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation. American Psychologist
- Milkman, K. L., Minson, J. A. & Volpp, K. G. M. (2014). Holding the Hunger Games hostage at the gym: An evaluation of temptation bundling. Management Science
- いのちの電話(日本いのちの電話連盟)
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